国立近代美術館の企画展に行った後、そのチケットで所蔵作品展も観れるのでそのまま2〜4階で開催されている「誰がためにたたかう?」に行ってきました。

正直こちらのテーマ展の方が良かったです。タイムリーに感じました。

おそらく企画展の方は随分と前から決まっていて、他の美術館から美術品を借りる関係もあって、このタイミングでしかできなかったのだと思いますが。

今回は3フロアを使い大規模に「たたかう」をコアコンセプトに展示。フロアごとに時代、12の区切られた部屋ごとに小テーマ(動物の争い、国同士、男女、世代間など)を設け、様々な角度から「戦うこと」について考える約200点を紹介。

★展示構成
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20150526/#section1-2

かなり見応えありました。すごいパワーが流れてきました。

個人的に想定していた通り、戦争を扱う作品も多かったです。生々しかったり、または激しく風刺的な表現だったり、正視するのが辛い作品もありました。展示のキャプションを読むと、これらの作家さんは、行ったことのない土地、体験したことのない戦場の絵を聞き伝えで描くこともあったそうです。

中村研一「コタ・バル」

そうやって戦争”記録画”を描いていた中村研一、藤田嗣治、宮本三郎の作品は、あくまで戦争のジェスチャーでしかないと、美術館のキャプションで書かれていましたが、私には十分刺激的でした。

また、戦中を生きた作家として、太平洋戦争への従軍経験を持つ岡本太郎、戦時下に青春を過ごした間所沙織の作品。戦後の日本画滅亡論に危機感を感じ、変革を試みた吉岡堅二、福田豊四郎。
そして戦後を生きた村上隆、奈良美智。
国立近代美術館の底力を感じる豪華な面々でした。

岡本太郎「燃える人」

最後の12番目の小テーマは総括的な意味合いで、「傷」あるいは「傷つきやすさ」をテーマにしていました。

そして現代アートで終わる本展の締めの意味を込めてか、このように最後を表現。

”他人の傷に自然に反応してしまうこと、そしてそういう傷が生じてしまうような脆い身体と心を持っていること、そうした事実が人間の社会をその根底において支えている。「傷つきやすさ」が現代美術の主要なテーマになっているのは、ともすればそうした「事実」が忘れられがちだからかもしれません。”

こういうキャプション(メッセージ)を書くことって客観的な視座のものが多い印象があり、意志を込めるには温度感が難しそうだなと、つまりつまらないなと、いつも思ってました。ただ今回の展覧会では、書いた人の情熱が伝わるものが所々あったので、私の心に言葉が届きました。

イムラレイコ「横たわる少女」

さて、美術館が本展で伝えたかったことって何だったのか、考えたいです。

今回最新号の美術手帖でも「絵描きと戦争」というテーマで戦争画について特集していますが、アートが、政治や社会風潮のコントロールのためにある種プロパガンダ的に利用されてきた歴史があるのは事実だと思います。

いま、芸術は独立できているのでしょうか。

安全保障問題、平和憲法のこれから、様々に今後の日本の「戦争観」が語られているいま、今回の国立近代美術館の展示は意義深かったと私は思います。
美術館が鳴らしている警鐘を感じたように思います。

ぜひ見に行ってみてください。

追記:
テーマ展等は別ですが、日本画コレクションの豊富な国立近代美術館。今回の常設展の方で、川端龍子の「草炎」を見ることができました。
よく日本画見るときに「音がする」感覚になるのですが、これは本当に自分がその絵の中にいるような感覚になります。
この絵画も必見です。

川端龍子「草炎」

MOMAT コレクション
特集: 誰がためにたたかう?

会期 : 2015年5月26日 – 9月6日(月曜休)
時間 : 午前10時 – 午後5時(入館16時半まで)
会場 : 国立近代美術館 2.3.4階 →googlemap
URL : http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20150526/
住所 : 東京都千代田区北の丸公園3-1
料金 : 430円 ※所蔵作品展のみの場合、詳細はギャラリーHPへ
交通 : 東京メトロ東西線竹橋駅 1b出口より徒歩3分

 

★画像引用元
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MOMATコレクション 特集:誰がためにたたかう?
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